新約聖書の至聖所とも呼ばれるヨハネ13章から17章。ところがその至聖所で裏切りが起こります。神が裏切られたのでした。
【心を騒がせる神】
18世紀ごろの東欧では、イースターに「裏切り者のユダ」の人形を吊るして焼くことが行われていたのだそうです。キリストを裏切ったユダ憎し、というわけです。けれども、主イエスご自身はユダを憎みませんでした。「イエスは、これらのことを話されたとき、心が騒いだ。そして証しされた。」(21a)とあります。心が騒いだ!神の心が!主イエスはユダの裏切りに不安や恐れを感じたのではありません。もとより十字架を覚悟しておられるのですから。主イエスの心、神の心が騒いだのは、光の中から暗闇の中へ去って行こうとするユダを思ってのことです。ユダを愛し、ユダを惜しんで、無関心ではいられず、心を騒がせ、あわれみに胸を熱くしてくださったのでした。ここまでにも、何度も主イエスはユダの裏切りを口にされました。主イエスはそのたびごとにユダを惜しみ、ユダのために心を騒がせてくださっていたのでした。
私たちが罪をおかすとき、神の心は騒ぎます。私たちを愛し、私たちを惜しんで、無関心ではいられないからです。罪をおかした者の最大の苦しみはここにあります。罪は、神の心を騒がせること、神の心を繰り返し痛め、悲しませることだからです。
【サタンが…】
「ユダがパン切れを受け取ると、そのとき、サタンが彼に入った。」(27)とあります。私たちはこの個所を読むと、「サタンが入ったのならしかたがない、主イエスもユダをあきらめて、『あなたがしようとしていることを、すぐしなさい。』(27c)といったのだろう」と思ってしまうかもしれません。
けれども、主イエスはしばしば悪霊を追い出されてきました。そして十字架の上で、「死の力を持つ者、すなわち、悪魔をご自分の死によって滅ぼし、死の恐怖によって一生涯奴隷としてつながれていた人々を解放するためでした」(へブル2:14b-15)。ですからサタンには勝てないと思ってはなりません。ユダはサタンのそそのかしに、やはり自分で同意してしまったのでした。
ユダはなぜ主イエスを裏切ったのでしょうか。お金をごまかしていたから、ユダヤが、武力でローマから独立することを望んでいたから、そういったこともあったでしょう。しかし何よりも、ユダは主イエスが開かれた神の国を見ていませんでした。主イエスは、ユダ以上の革命家でした。武力によってローマを追い出すのではなく、世界を神の国にしたのです。それをさまたげるサタンを滅ぼすことによって。サタンは、ユダの心を将来への不安や、自分が今なんとかしなければという恐れや焦りによって縛りました。ユダの破れ、神との関係の破れを通して入り込みました。
「ユダはパン切れを受けると、すぐに出て行った。時は夜であった。」(30)。何もいわずに闇の中へと去っていったユダ。私たちの心も騒ぎます。痛みます。主イエスの心とともに。裏切られてもなお愛する神の心とともに。
【イエスが愛しておられた弟子】
「イエスが愛しておられた弟子」(25b)は、ヨハネが、好んで用いた言葉。ヨハネ自身のことですが、それだけではありません。「イエスが愛しておられた弟子」は、私たちのことでもあり、ユダのことでもあります。
ユダの最大の問題は、自分が「イエスが愛しておられた弟子」であることを忘れたことにあります。闇の中に出ていくその背中にも、主イエスの愛のまなざしが痛いほど注がれていたのに、それがわからなかったのです。苦々しい思いで、たったひとりで、背筋を伸ばして、伸ばした背筋に悲壮感をみなぎらせてユダは去っていきました。
それに比べてヨハネはあまり毅然としているようには見えません。「イエスの胸元に寄りかかったまま」(25a)でくつろいでいるのです。当時は身を横たえての食事の習慣であったとはいえ、なんともほほえましい光景です。ヨハネは、主イエスの愛の中にひたっているのです。仲間と共に。
「ユダにはなるまじ」という賛美があります。ユダにならないための秘訣は、主イエスの愛の中にいることです。仲間とともに。それは今、私たちがしていることです。いっしょに集まり、主イエスの愛のことばに耳を傾け、私たちの愛を、仲間とともに献げる。仲間どうしで注ぎ合う。そんなたがいを喜びましょう。光の中で。
礼拝プログラム
■教会学校(9:30-10:15)
- 「愛なる神」ヨハネの手紙第一 4:7-11
■主日礼拝(10:30-11:45)
- 前奏:(奏楽の内に主を待ち望みましょう)
- 招きの言葉:アモス書5:24(p.1567)
- 賛美:211
- 交読文:8 詩篇24篇(P.834)
- 牧会祈祷:大頭眞一牧師
- 主の祈り:新聖歌 P.826
- 賛美:206
- 信仰告白:使徒信条(新聖歌 P.826)
- 聖書朗読:ヨハネの福音書13章21-30節(新約P.212)
- 説教:「裏切られた神」大頭眞一牧師 ※信愛より
- 聖餐:(心を合わせて加わりましょう)
- 賛美・献金:340
- 感謝祈祷:
- 頌栄:讃美歌21「27番」(曲は新聖歌63と同じ、詞は下記)
- 「父・子・聖霊の ひとりの主よ 栄えと力は ただ主にあれ とこしえまで アーメン」
- 祝祷:大頭眞一牧師
- カテキズム:(左上に掲載)大頭眞一牧師 と 報告:(裏面に掲載)司会者
- 祈祷: